こんにちは。
今回は建設業者が取り交わす請負契約書についてご紹介します。
請負契約の意義、必ず記載しなければならない事項、最後に建設業フォローアップ相談ダイヤルより抜粋したQ&Aからこれってどうなの?という事例もご紹介していきます。
請負契約の原則
いきなりですがまず建設業法第2条第2項には次のように記載されています。
この法律において「建設業」とは、元請、下請その他いかなる名義をもつてするかを問わず、建設工事の完成を請け負う営業をいう。(建設業法第2条第2項)
建設工事の完成を「請け負う」営業を行うのが建設業なわけです。
つまり、建設業者が取り交わす契約は「請負契約」を前提にしていると言えます。
民法632条によれば、「請負」とは
当事者の一方がある仕事を完成することを約し、相手方がその仕事の結果に対してその報酬を支払うことを約することによって、その効力を生ずる。
とされています。
建設業者が取り交わす請負契約は、雇用契約や委任契約とは違って仕事の完成をすることが前提とされているということです。
また、建設業法第18条では
建設工事の請負契約の当事者は、各々の対等な立場における合意に基いて公正な契約を締結し、信義に従つて誠実にこれを履行しなければならない。(建設業法第18条)
とされています。
しかしながら、建設業界は実態として元請人と下請人が各段階で幾重にも存在していることが多く、上下の力関係や知識の有無などの背景によってこの原則を実行することが難しいいこともあるようです。
国交省では「元請人・下請任間のガイドライン」や「発注者・受注者間のガイドライン」を設定していますので参照しながら適正な請負契約を締結するようにしていきましょう。
請負契約記載事項
建設工事の請負契約の当事者は、契約の締結に際して以下のの事項を書面に記載し、署名又は記名押印して相互に交付しなければならない。(建設業法第19条第1項)
一 工事内容
二 請負代金の額
三 工事着手の時期及び工事完成の時期
四 工事を施工しない日又は時間帯の定めをするときは、その内容
五 請負代金の全部又は一部の前金払又は出来形部分に対する支払の定めをするときは、その支払の時期及び方法
六 当事者の一方から設計変更又は工事着手の延期若しくは工事の全部若しくは一部の中止の申出があつた場合における工期の変更、請負代金の額の変更又は損害の負担及びそれらの額の算定方法に関する定め
七 天災その他不可抗力による工期の変更又は損害の負担及びその額の算定方法に関する定め
八 価格等(物価統制令(昭和二十一年勅令第百十八号)第二条に規定する価格等をいう。)の変動若しくは変更に基づく請負代金の額又は工事内容の変更
九 工事の施工により第三者が損害を受けた場合における賠償金の負担に関する定め
十 注文者が工事に使用する資材を提供し、又は建設機械その他の機械を貸与するときは、その内容及び方法に関する定め
十一 注文者が工事の全部又は一部の完成を確認するための検査の時期及び方法並びに引渡しの時期
十二 工事完成後における請負代金の支払の時期及び方法
十三 工事の目的物が種類又は品質に関して契約の内容に適合しない場合におけるその不適合を担保すべき責任又は当該責任の履行に関して講ずべき保証保険契約の締結その他の措置に関する定めをするときは、その内容
十四 各当事者の履行の遅滞その他債務の不履行の場合における遅延利息、違約金その他の損害金
十五 契約に関する紛争の解決方法
十六 その他国土交通省令で定める事項
トラブル防止のためにも多くの事項を記載しなければなりません。
一つ一つを自作するのはとても大変ですよね。
そこで・・・
国土交通省が設置する「中央建設業審査会」が以上の記載事項を取り入れた標準工事請負契約約款を公開しています。
中央建設業審査会もこの約款の使用と実施を勧告しています。
取り入れていきましょう。
請負契約に関するQ&A
ここでは建設業フォローアップ相談ダイヤルに寄せられた案件をいくつか引用してみます。
これってどうなの?こういう場合はどう解釈するべき?など共有できればと思います。
- 建設業法第19条(一定の記載事項を記載した請負契約書を相互に交付すること)は500万円未満の工事の請負契約についても適用されますか?
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建設業の許可を要しない軽微な建設工事においても、建設業法第19条の規定は適用されます。
- 基本契約書は紙で締結しているが、注文書・注文請書についてPDFデータをメールで送ることは可能ですか?
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注文書・注文請書は書面で押印し両者で交付していただくものであるため、PDFデータをメールで送ることでは足りません。
- 建設工事の請負契約書を正本1部作成し、コピーをしたものを相手方に渡すことで問題ありませんか?
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単なるコピーでの交付は「署名又は記名押印のうえ相互に交付」の要件を満たすとは認められません。2部原本を作成し、それぞれが持つのが正しいです。
- 契約の内容には合意していますが、施主側の社内決裁に時間を要しており、予定している工期を遵守するために現場着手を遅らせることができません。この場合施主側からの指示をもって、契約締結前に現場着手しても問題ないでしょうか?
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法的に締結前の現地着手は違法です。施主側の社内決裁での時間が問題になるのであれば、その旨協議して完成工期を延長するなどを契約内容に盛り込むなどの対策をとる必要があります。
- 注文書・請書をFAXでやり取りすることは業法上認められますか?また、FAXでのやり取りは建設業法第19条3項(電子契約)の基準に合致しますか?
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契約当事者双方が契約書原本の保存が求められていますので、FAXのみの保存は建設業法違反となります。また、電子契約を行うには技術的基準(改ざん防止、電子署名、本人性の確認)を満たす必要があり、FAXはこの技術的基準を満たしていません。
まとめ
今回は建設業者が締結する請負契約書、締結時のポイントやQ&Aを取り上げました。
建設業者の皆さんにご参考になればと思います。
今回は以上です。
最後までお読みいただきありがとうございました。