こんにちは。
今回は農地を転用せずに農地のままで、売買や貸借をしたい場合に必要な農地法3条の許可について紹介します。
農地法3条許可の対象について
農地法3条の許可の対象は次の通りです。
農地を農地のまま、所有権の移転、地上権、永小作権、質権、使用貸借による権利、賃借権、その他の使用及び収益を目的とする権利の設定や移転すること。
なお、この対象となる権利には区分地上権といって、例えば営農を継続したまま、農地の空中や地下の一部に太陽光発電設備などの工作物を設置することを目的とした賃借も含まれます。
所有権移転や使用収益権の効力
農地や採草放牧地を許可を受けずにした所有権の移転や使用収益権の設定は効力を生じません。
所有権の移転の場合には登記も行うことができませんので、第三者に対して土地の所有権を対抗(主張)することができません。
また、許可を受けずに貸借することも同じように権利の効力が生じません。許可を受けずに貸借する、いわゆるヤミ貸借を行うと農地法違反となり、3年以下の懲役や300万円以下の罰金刑に処されます。
農地法3条許可を受けるときは
許可申請書には譲渡人(売主)と譲受人(買主)が連署で申請を行います。
申請書にはそれぞれの住所、氏名、年齢、職業、許可を受けようとする土地の所在、権利の設定や移転の契約の内容などを記載します。
契約の内容の欄には、
・権利を設定又は移転しようとする時期
・土地の引き渡しを受けようとする時期
・契約期間
などを記載します。
申請書には別添として
・権利を取得しようとする者が所有権を有する農地や採草放牧地の利用状況
・権利を取得しようとする者の機械の所有状況、農作業に従事する者の数の状況
・権利を取得しようとする者やその世帯員等の行う農作業への従事状況
・権利を取得しようとする者の権利取得後の経営面積の状況
などの書類を提出します。
遺産分割や財産分与、相続は農地法3条の許可が不要
遺産の分割や、離婚による財産分与の裁判等によって権利が設定、移転される場合は農地法3条の許可は不要です。
これは権利の設定、移転の性質上農地法の許可を受けさせることが適当でないためです。
また、相続、時効取得、法人の合併・分割等による場合も農地法3条の許可は不要となります。
これは農地法の許可は、契約その他の法律行為によって農地等の権利が設定、移転する場合を対象としていることから、これに該当しないためです。
ただし、許可は不要であっても、上記の理由で農地の取得をした場合には、農地法3条の3の規定によって遅滞なく(おおむね10か月以内に)農業委員会に届け出る必要がありますので注意してください。
農地に仮登記や抵当権が設定されているときの売買
仮登記、抵当権が設定されている農地の売買についても、これらの登記がない農地の売買の場合と同様の基準により許可、不許可が決めれらます。
昭和42年11月10日の最高裁の判例です。
農地法3条に基づく許可は、農地法の立法目的に照らして、申請に係る農地の所有権移転につき、その権利の取得者が農地法の適格性を有するか否かの点についてのみ判断して決定するべきであり、それ以上に、その所有権移転等の私法上の効力の成否等についてまで判断すべきではない。
なお、農地の所有権の二重譲渡の場合にも、その所有権の優劣は、知事の所有権移転の許可の先後によってではなく、所有権移転登記の先後によって決定される。
としています。
まとめ
今回は農地法3条許可についてご紹介しました。
許可の対象や、効力の発生、申請の注意点、許可不要な場合などご参考になればと思います。
最後までお読みいただきありがとうございました。